>_tech-draft
OpenAIのアイコン
OpenAI
動画公開日
タイトル

Customer Ignite Talk: Antonio Bravo Acin (Global Head of AI Transformation, BBVA) & OpenAI

再生時間

18分 42秒

BBVAが実践する全社AI戦略:ビジネスを変革する6つのロボットと成功の秘訣

ポイント

  • BBVAはAIを単なる追加機能ではなく、ビジネス全体を変革する中核的なオペレーティングレイヤーとして位置づける全社AI戦略を実践しています。
  • 小売、リスク分析、業務プロセス効率化など6つの専門的な「ロボット」と2つのデータ基盤により、具体的なビジネス課題を解決しています。
  • トップダウンとボトムアップの統合、反復的な価値提供、組織連携、そしてチェンジマネジメントが、大規模なAI導入成功の鍵として解説されています。

BBVAは世界最大級の銀行の一つであり、その目標はAIを単なる追加機能としてではなく、ビジネス全体に深く浸透させることでした。質問応答だけでなく、重要なビジネス機能を積極的にサポートするためにAIを活用しています。彼らはまず、全世界12万人以上の従業員にJBT Enterpriseを展開し、AIを企業全体のオペレーティングレイヤーへと変革させました。この取り組みを通じて、彼らはそのビジョンを6つの専門的な「ロボット」と2つのサポート基盤へと拡大しました。これらはそれぞれ、ビジネスの中核部分を支援するために構築されています。

BBVAのAI戦略:ビジネスを変革する6つの「ロボット」

BBVAがAIを導入する上で定義した、トップダウンのアジェンダは、AIがもたらす主要な機会に焦点を当てています。これは単に技術主導のアプローチではなく、経営陣や各事業部門、各国と連携して策定されました。BBVAのAI戦略は、バリューチェーン全体にわたる主要なインパクトポイントにAIを組み込むことを目的としています。この戦略の中心となるのが、以下の6つの「ロボット」です。

ロボット1: 小売ビジネス変革 (Retail Robot)

過去10〜15年間、BBVAはモバイルを通じて顧客への新しい流通モデルの提供に多大な投資を行ってきました。ロボット1の目標は、デジタルチャネル(スマートフォンや将来登場するあらゆるデバイス)を通じて、顧客がBBVAの製品やサービスと対話するための新しい体験を創出することです。これは、小売部門の責任者と各事業における小売部門の責任者が共同でスポンサーを務めています。

ロボット2: バンカーと顧客の関係強化 (Banker-Client Relationship Transformation)

このロボットは、通常、アドバイザリー(助言業務)がより重要な役割を果たすセグメント、例えば法人・投資銀行、企業、プライベートバンキングにおいて、バンカーと顧客の関係を変革することを目指します。これらのセグメントでは、バンカーが顧客と接する時間の平均が約20〜25%とされています。BBVAはAIを活用することで、バンカーが顧客へのアドバイスにより多くの時間を費やせるようにすることを目指しています。これにより、顧客との関係性をより深め、ビジネスへの影響を大幅に拡大できると期待されています。このロボットは、法人・投資銀行、プライベートバンキング、企業の各責任者が共同で主導しています。

ロボット3: リスク分析の高度化 (Risk Analytics Enhancement)

銀行における分析機能の中核であるリスク管理において、AI機能が導入されます。リスクアナリストがより優れた分析を、より迅速に行えるように支援することが目的です。これにより、リスク引受プロセス(融資や保険などの契約審査)を効率化し、顧客にとってもより利用しやすいものにすることを目指しています。

ロボット4: プロセスとバックオフィス業務の効率化 (Process & Back Office Operations)

このロボットは、プロセスの自動化とバックオフィス業務の効率化に焦点を当てています。具体的には、書類からの情報抽出や分類、住宅ローン、消費者金融、保険などに関する膨大な事務処理の管理といった領域です。AIはこれらの分野において、大きなインパクトをもたらすと期待されています。

ロボット5: ソフトウェア開発の生産性向上 (Software Development Productivity)

BBVAのような大規模なソフトウェア開発組織にとって、AIはソフトウェア開発の生産性を向上させる重要な手段です。このロボットでは、CodexのようなAIツールを開発者に提供することで、彼らの生産性を高め、蓄積されたバックログ(未処理の作業)を解消することを目指しています。常にリソースが不足し、優先順位付けが必要となる中で、AIを活用してこの課題を解決しようとしています。

ロボット6: AIの全従業員への普及 (Connected Robot - AI for Everyone)

この「コネクテッドロボット」の目標は、AIを誰もが利用できるようにすることです。BBVAは、役割に関わらず全ての従業員に12万のCHBDライセンスを展開しました。これは、従業員がカレンダー管理、メール、HRツールなど、日常業務で利用する様々なツールを管理するための汎用エージェントを構築できるよう支援することを目的としています。リスク担当者であろうとバンカーであろうと、あらゆる従業員がAIを活用できる環境を整備しています。

AI戦略を支える2つの基盤

BBVAの包括的なAI戦略は、上記の6つのロボットに加え、以下の2つの重要な基盤によって支えられています。

基盤1: データリッチな企業への変革 (Becoming a Data-Rich Company)

AIエージェントがその真価を発揮するためには、高品質なデータが不可欠です。この基盤は、AIエージェントによってデータが容易に利用・消費できるよう、データを整備し、BBVAを「データリッチな企業」へと変革することを目的としています。

基盤2: エージェントネットワークの管理とオーケストレーション (Agent Network Management & Orchestration)

BBVAが構築を進めているこのエージェントのネットワーク全体を管理することも重要な基盤です。このネットワークの運用、そして継続的な改善を実現するためには、テクノロジーと組織全体のオーケストレーション(連携・統合)が必要となります。

BBVAのAI運用モデルと成功への原則

BBVAのAI戦略は、単なる技術導入に留まらず、組織文化、ガバナンス、人材開発といった多角的なアプローチで推進されています。

反復的な価値提供と「アハ・モーメント」 (Iterative Value & Aha Moments)

BBVAは、トップダウンのアジェンダを持つ一方で、反復的なアプローチを重視し、短期的な価値提供を確実に実現しています。具体的には、「アハ・モーメント」という概念を導入し、2〜3ヶ月ごとに、ビジネスやスポンサーにとって非常に具体的で目に見えるインパクトを持つ成果を生み出すよう努めています。これらの「アハ・モーメント」は、AIの可能性を示し、組織全体での採用に「雪だるま効果」を生み出しています。

オペレーティングモデルの協調 (Collaborative Operating Model)

BBVAの運用モデルでは、全てのデータチームとAIファクトリーが、各「ロボット」を担う事業部門やチームと密接に連携して作業を進めます。実験に重点を置き、エコシステム内のパートナーシップを非常に重要視しています。また、段階的な投資アプローチを採用しており、「アハ・モーメント」に基づいてチームに段階的に資金を供給することで、長期的な効果を生み出しています。

トップダウンとボトムアップのアプローチ (Top-Down and Bottom-Up Approach)

BBVAは、非常に構造化されたトップダウンのアジェンダを持っていますが、同時にAIの広範な採用を通じて得られる、素晴らしいボトムアップのインパクトも重視し、これらを統合しています。これにより、組織全体のAI活用を推進しています。

ガバナンスと連携 (Governance & Coordination)

12万人という大規模な組織において、AIアジェンダをAIチームのみに限定しないように、全員を巻き込むことが非常に重要です。そのため、各ロボットの全てのスポンサーが、進行中の取り組みに深く関与するよう努めています。これにより、適切なガバナンスと組織全体の連携が実現されます。

多分野横断型チーム (Multi-Disciplinary Teams)

データサイエンティスト、機械学習エンジニア、ソフトウェア開発者といった多様な能力を持つチームを、小売、商業、リスクなどの事業チームに配置し、共同でAIエージェントの構築に取り組んでいます。このような「コ・ロケーション」(同じ場所での共同作業)は非常に重要であり、従来の働き方を刷新するものとなっています。

チェンジマネジメントと文化変革 (Change Management & Cultural Change)

AIエージェントを構築しても、従業員がそれを使うことを恐れたり、何をもたらすかを懸念したりすれば、成功は望めません。そのため、BBVAはチェンジマネジメント、トレーニング、そして現実に基づいたポジティブなナラティブ(語り口)の提供に多大な焦点を当てています。これにより、従業員がAIを受け入れ、活用できる文化を醸成しています。

まとめ

BBVAのAI戦略は、AIを単なる技術ツールとしてではなく、ビジネス全体を変革する中核的なオペレーティングレイヤーとして位置づける、野心的かつ包括的なアプローチです。6つの専門的な「ロボット」を通じて各ビジネス領域に深くAIを適用し、データ基盤の整備、洗練された運用モデル、そして最も重要なチェンジマネジメントと文化変革によって、この大規模な変革を推進しています。BBVAの事例は、企業がAIを真にビジネスの中核に据え、持続的な成長を実現するための実践的なロードマップを示しています。

参考動画

https://www.youtube.com/watch?v=UNJSk90Lz1c