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Building a self-playing pinball machine with Antigravity

再生時間

2分 56秒

AIとWeb Serial APIで現実世界を動かす!自動演奏ピンボール開発の実践

ポイント

  • AIエージェントとWeb Serial APIを活用し、物理的なピンボールマシンを自動演奏させる開発プロジェクトの実践例を紹介。
  • AIエージェント「Anti-gravity」が計画立案からファームウェア開発、UI構築までを支援し、リアルとデジタルを融合するプロセスを解説。
  • 本記事を通じて、AIを共同開発者として現実世界のモノを動かす技術の可能性や、Web Serial APIによるIoT応用への知見が得られます。

はじめに:AIエージェント「Anti-gravity」が拓く新たな可能性

本記事では、AIエージェント「Anti-gravity」を用いて、自己演奏するピンボールマシンを構築する画期的なプロジェクトについてご紹介します。このプロジェクトの最大の魅力は、現実世界とデジタル世界をシームレスに橋渡しする点にあります。

この取り組みは、「それ自身でプレイするピンボールマシンを作成する」という明確な目標から始まりました。プロジェクトの初期段階では、「最終的なドアを設定すること」についてAnti-gravityにプロンプトを与え、その後、具体的な実装に向けて議論を深めていきました。

私たちが使用するインターフェースとして、Web Serial APIを用いるという明確なコンテキストをAnti-gravityに伝えました。Web Serial APIは、Webブラウザからシリアルポート経由で物理デバイスと通信することを可能にするAPIであり、デジタルとリアルの接点として非常に重要な役割を担います。

フリッパーの作動からコンピュータビジョンアルゴリズムの構築、そして最終的なユーザーインターフェースの作成に至るまで、Anti-gravityはプロジェクトのビルディングブロックを共に作り上げていきました。Anti-gravityは、私が抱えていた最初の課題を深く理解し、思考プロセスを通じて私を導き、目指す場所に到達するのを支援してくれました。アイデアを出し合い、協力し、ソリューションを実装できるAIエージェントの存在は、開発プロセスにおいて非常に価値あるものでした。

プロジェクトの核心:リアルとデジタルの融合

このプロジェクトで最もエキサイティングな部分は、まさに現実世界(物理的なピンボールマシン)とデジタル世界(制御するソフトウェア)を橋渡ししている点にあります。この融合を実現するために、いくつかの主要な技術要素が組み合わされています。

物理的な制御メカニズム

ピンボールマシンのフリッパーを物理的に動かすためには、2つのソレノイドアクチュエータを使用しています。ソレノイドアクチュエータは、電気エネルギーを機械的な動きに変換する装置であり、フリッパーを素早く正確に作動させるために不可欠です。

視覚を通じた状況認識

ピンボールのプレイエリア、特にフリッパーの周囲の状況を把握するために、カメラを設置しています。このカメラはフリッパー領域を継続的に監視し、ボールの位置や動きをデジタル情報として捉えます。これにより、マシンがゲームの進行を「見る」ことが可能になります。

マイクロコントローラとAI生成ファームウェア

これら物理的なコンポーネント(ソレノイドアクチュエータとカメラ)は、マイクロコントローラに接続されています。このマイクロコントローラ上で動作するファームウェアは、なんとAnti-gravityによって作成されました。ファームウェアは、カメラからの情報を処理し、それに基づいてソレノイドアクチュエータに適切なコマンドを送る役割を担います。マイクロコントローラはUSB経由でコマンドを受信するため、PCと容易に連携できます。

ラップトップからの統合制御とユーザーインターフェース

そして、ラップトップ上で動作するプログラムが、このシステム全体を制御します。このプログラムは、マイクロコントローラから送られてくる現在のゲーム状況(例えば、ボールの位置情報など)を認識し、その情報に基づいてピンボールマシンの動きを制御するためのコマンドをマイクロコントローラに送信します。Web Serial APIを用いることで、このラップトップ上のプログラム(具体的にはWebブラウザベースのアプリケーション)から、USB接続されたマイクロコントローラに対して直接シリアル通信を行うことが可能になります。これにより、ユーザーインターフェースを通じて、ピンボールマシンの状態を視覚化し、必要に応じて手動で介入したり、自動制御のパラメータを調整したりすることができます。

プロジェクトを開始した際の初期のプロンプトでは、「仮想ピンボールキャビネット用の特殊なWeb SerialおよびBluetoothコントローラを作成する」という目標も設定されていました。Anti-gravityは、計画の立案、構築タスクの定義、そして実装の承認を私に求めながら、実装そのものを行いました。このように、Anti-gravityは単なるコードジェネレーターではなく、プロジェクトの構想から実行までをサポートする真の共同作業者として機能しました。

開発プロセスとAnti-gravityの共同作業

Anti-gravityとの共同作業は、非常に効率的かつインタラクティブに進められました。

プロジェクトの開始とタスクリスト

Anti-gravityはまず、「simple serial sender」という新しいプロジェクトを作成しました。これにより、明確なタスクリストが生成され、Anti-gravityが作成した計画に基づいて各タスクを実行していくことになりました。この計画的なアプローチにより、開発の方向性が常に明確に保たれました。

コードの構築と実行

Anti-gravityは、与えられた要件に基づいて自動的にコードを構築しました。私は、そのコードを実行するように指示するだけで済みました。テストでは、簡単に「1」または「2」といったコマンドを送信できることを確認しました。これは、物理的なフリッパー制御の基本的な動作テストを意味していると考えられます。

新機能の追加とWebブラウザでの確認

プロジェクトの進行に伴い、カメラ機能の追加といった新機能も組み込まれました。カメラを追加した後、それが正しく機能するかどうかを確認しました。そして、私たちが追加した新しい機能と共にブラウザベースのユーザーインターフェースが開かれました。これにより、リアルタイムでカメラからの映像を確認したり、システムの状況を視覚的に把握したりすることが可能になり、開発の進捗を迅速に確認することができました。この段階で、プロジェクトが具体的な形になりつつあることを実感しました。

開発における課題と解決策:フリッパー制御の微調整

開発プロセスにおいては、予期せぬ課題に直面することもあります。このプロジェクトで特に興味深かったのは、フリッパーをどのようにトリガーするかというパラメータの微調整でした。

誤認識問題の発生

ゲームプレイ中、ピンボール台上の特定のライトが比較的ランダムに点灯することがあります。これらのライトは円形であるため、コンピュータビジョンアルゴリズムがこれらを誤って「ボール」として認識してしまう傾向がありました。これにより、実際にはボールが存在しないにもかかわらず、フリッパーが不必要に作動してしまうという問題が発生しました。

「ゾーン」による解決策

この誤認識問題に対処するため、私たちは試行錯誤を重ねました。その結果、フリッパーが誤ってトリガーされないように、効果的に「ゾーン」を作成するというアイデアにたどり着きました。具体的には、特定のエリア(ライトが点灯する箇所など)をフリッパーのトリガー対象から除外する、あるいは認識の優先度を下げる、といった処理をコンピュータビジョンアルゴリズムに組み込んだと考えられます。この「ゾーン」設定により、アルゴリズムの精度が向上し、より信頼性の高い自動フリッパー制御が実現されました。

まとめ:リアルとデジタルの融合がもたらす体験

本プロジェクトは、アイデアを「ゼロからイチへ」、つまりコンピュータの画面上だけでなく、現実世界で実際に機能する形に簡単に実現できるという素晴らしいショーケースとなりました。

ラップトップから制御される、現実世界で物理的に動作するものを構築できるという経験は、私にとって非常に魅力的でした。これは、AIエージェントが単なる開発ツールを超え、創造的なプロセスにおける強力な共同作業者となり得ることを示しています。

Anti-gravityとWeb Serial API、コンピュータビジョン、マイクロコントローラといった技術を組み合わせることで、私たちはデジタルとリアルの境界線を曖昧にし、これまでにないインタラクティブな体験を創造することができました。このプロジェクトを通じて得られた知見と技術は、IoT(モノのインターネット)やスマートデバイスの開発など、様々な分野に応用できる可能性を秘めています。

この実践事例が、皆様の新たなアイデア実現の一助となれば幸いです。

参考動画